2014.09.16

元気なシニアの自立と共生 ~グループリビングの取り組み~

先日、当社が中長期戦略の一つに据えている「三世代学び合い」というテーマにご関心をいただいている方からのご紹介で、神奈川県にある高齢者グループリビング2施設を相次いで見学する機会をいただきました。

<インタビューのお相手>
NPO法人COCO湘南 グループリビング運営協議会 事務局 土井原奈津江様
NPO法人グループリビング川崎 理事長 原眞澄美様

一つは、NPO法人COCO湘南が運営されている「COCO湘南」。もう一つは、「COCO湘南」の理念に感銘を受けた、NPO法人グループリビング川崎による「COCO宮内」です。
どちらも、「高齢者の自立と共生」をキーコンセプトとして、10戸の居室をベースとしたバリアフリーの高齢者住宅というハードと、共同運営や役割分担といったソフトを綿密に設計して作られたものになっています。

グループリビングという呼称はあまり一般には馴染みのない言葉ですので、いわゆる老人福祉施設の一つであるグループホームと混同される方も多いと思います。

分かりやすい表現をすると、企画・設計部分は、少し前に流行った「コレクティブハウス」(これも分かりにくいかもしれません)のように複数の入居者が協働して行い、施設自体は、今増えている「シェアハウス」のように世帯別の居室+シェアスペース(共同のキッチン、ダイニング、入浴施設など)という基本構造を持った共同住宅と言えば、イメージしやすいかと思います。

シェアハウスより個人的に好印象だったのは、シェアハウスの居室は一世帯13㎡ぐらいが多いのですが、こちらグループリビングでは個々人に25㎡を確保しているケースが多く、長い時間を過ごすにも快適そうでした。また、総じて広いダイニングスペース、和室、宿泊可能なゲストルームなど、精神的にも豊かでゆとりある空間利用に気が配られている点も、単なる高齢者施設ではないと思いました。

どちらのグループリビングも、NPO法人の代表の方自身が、自身が将来高齢になった時の不安や、社会全体の高齢化が進行することへの課題意識をきっかけに、3年前後の研究開発期間を経て形作られたものということで、企業が「こういうサービスが良いでしょ」「これならお金払うでしょ」と押し付けるものではなく、あくまで入居するシニア自身の「自分たちが自分らしく生きるために、どういう施設であるべきなのか」という主体的な意思に基づいて作られているため、一つの建物・施設であるとはいえ、文字通り「自治」を行っている、一つの「村」というような感じさえいたしました。

グループリビングの事例は、全国には他にもいくつもの事例がありますが、大学の研究室と繋がりを持つケースが多いなど、まだ学問的研究のステージであり、様々な方法が実験的に行われています。そのため、それぞれの施設がそれぞれの世界観で取り組んでおり、特にソフト面ではかなりバリエーションが見られます。施設によって、運営事務・食事づくりを外注するのか/入居者自身が関わるのか、といったバランスが異なりますし、介護や医療サービスがどの程度つけられるかもかなり違っています。

また入居者の自立や生活の充実だけではなく、地域貢献などの観点において、色々な施設を併設するというチャレンジもなされています。
COCO湘南の場合は、高齢者グループリビング+介護予防デイサービス、COCO宮内は、高齢者グループリビング+カフェ・アトリエ(趣味教室)・デイサービス・学童保育というように、複数のサービスを設けています。こうした取り組みは、「必然的に人が集まる仕組みを作る」「世代を超えてコミュニティを繋げる」といった、私たちの目標にも大変参考になります。

また、高齢者施設によくある高額な「入居金」についても、こちらは400万円弱と大変リーズナブルになっており、その金額設定自体が初期投資から逆算した明朗会計的なロジックで算出されているため、非常に納得感のあるものになっています。但し、これは利益を積み上げての拡大再生産を目的としないという、NPO法人ならではの「思い・理念」があって実現されているものと思います。

入居されるシニアにとっては、とても理想的な生活環境が整っていると思いますが、その特徴ゆえに、上記で少し触れた要因以外にも、普及・拡大のためには課題もあるようです。

・グループリビングという施設や概念が一般的ではなく、一般の人がとっつきにくい(目に留まらない・敬遠される)
・入居者自身の運営への参画もある程度求められるため、人によっては煩わしく思えたり、高齢になると居づらくなることがある
・老人ホームのような介護・医療サービスが付いていることが前提ではないため、介護度が上がれば退去しなければならない場合もある
・事前に入居者を集めるのが基本路線のため、旗振り役に地元の名士など、立地エリアでの知名度・信頼度が高い方が含まれていないと成り立ちにくい
・特別養護老人ホームや認可保育所のように、長期間約束された助成金・補助金があるわけではないので、地主の全面的な協力などがないと、事業の持続可能性の面でリスクが高い

このように、まだこれから事業として普及・拡大するためには、今後も改良・アレンジが必要なモデルであることは事実です。
ただ、さらに少子高齢化が進み、社会保障費を現役世代が背負うにも限界が生じるこれからの日本においては、シニアの心身の健康維持を前提とした「社会的自立」が重要になってきます。

そしてシニアだけではなく現役世代・子どもという、三世代が支え合いながら自立できる社会を作る拠点づくりのアイディアの一つとして、活用できるものではないかと感じました。