「隠れ待機」「保育士処遇」について国会議員・地方議員の皆様と懇談

2月20日(木)、衆議院議員会館で開催されました国会議員・自治体議員の皆様との懇談会に、保護者団体「みらい子育て全国ネットワーク」(miraco)のメンバーの方とともに、参加させていただきました。

当日、弊法人代表の長岡からは、調査協力を行っている自治体ヒアリングの結果を踏まえ、隠れ待機児童・待機児童カウント方法の課題についてプレゼンテーションさせていただきました。

冒頭、西村智奈美衆院議員からは、「私も3年前の今頃途方に暮れていたが、毎年毎年同じように『どうしよう』と駆け回っている方々の姿を想像すると胸が痛くなる。厳しい現状に対しどのような対応ができるのかを一緒に考えていきたい」とお話いただきました。

当日のプレゼンテーションでは、主に以下の内容をお話しました。
——————————-
待機児童について、ここ数年、待機児童数は減少しはじめていますが、待機児童数は「隠れ待機」の範囲によって減らせることから、ここ数年では待機児童の減少幅よりも隠れ待機児童が増加幅が大きくなっているというのが現状です。

そしてマクロ的な問題にとどまらず、ぞれぞれの地域で「数字上のゼロ」に親たちは翻弄されています。

なぜ、自治体は「待機児童ゼロ」と言いたいのでしょうか。

自治体のコメントからは、待機児童数が少なければ少ないほど、「国の掲げた目標に沿って実績をあげていることのアピール」「まちのイメージ向上」が図れると考え、特定園を希望している人や、認可外保育を自力で確保した人を隠れ待機児童のなかに含める等、「数え方の工夫」に向かってしまう状況があるようです。

しかし、今のカウント方法のままでは、「待機児童ゼロになったところで、ことは終わらない」とも言えます。

現在の待機児童カウント方法の大きな問題点は2つ。
①「待機児童」数の定義自体が分かりにくい
②「待機児童」のカウント方法が自治体ごとにバラバラ

現状では「自治体全域を希望していない」「自宅から自転車で20分圏内の保育園に空きがあるのに辞退した」「企業主導型保育事業を自力で見つけた」「認証や認定でもない認可外を自力で見つけ、利用料補助を受けている」「やむなく東京都のベビーシッター利用支援事業を利用している」「保育園に入れずやむなく、幼稚園の預かり保育を利用している」といったケースを「待機児童」としてカウントしていない自治体があります。

改めて、
「今の基準は、“毎日現実的に”通える範囲として妥当なのか?」
「“やむなく”入っている人や、自治体に頼らず枠を確保した人を待機から除くのは妥当なのか?」
以上の問いに改めて向き合うべきではないでしょうか。

政府への提案としては、実態を表す数字を分かりやすく公開していただけるよう
案1.定義をもっと厳密にする
案2.定義をわかりやすく、親にとって意味のある数字ごとに公開する
の2案を提示しました。

本提案について、当日会場にお越しいただいていた厚生労働省と内閣府の職員の方に、ご検討と今後の情報共有の方法について投げかけさせていただきました。

——————————-
また、待機児童ゼロに向けては保育人材の確保、そのための保育士の処遇改善が欠かせない中、現状の保育士の処遇改善策が抱える課題が多いこと、優先的に注力すべき点がずれているのではと、会計検査院の報告内容や現場の状況も踏まえ、問題提起させていただきました。

なお会の中で、「社会福祉法人に比べて、株式会社の事業者は人件費比率が低い」「公定価格によって計算される運営費の流用が問題であり、保育者給与に回っていないのでは」という意見が参加議員から出されました。

この点に関しては、、「miraco調査レポート2019年版」によると、保育士の処遇は年収で見ると、株式会社の方が社会福祉法人よりも高いという結果になっていることをお伝えした上で、別の調査では、離職率が高いのは株式会社運営の保育園であるという結果もみられることから、より正確な実態把握が必要とお話しました。

尚、保育士の給与は、事業者経由で支払われることから、処遇改善加算などが適切に保育士に分配されているかが、政策効果の検証としても大事なポイントですが、現在では、実態を正しく分析し、解決策を検討するためのデータが不足しているため、ご参加していた厚労省・内閣府の職員の方に、次回の「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」にて、経営主体ごとの経営実態や賃金水準などを分析結果として開示をしていただきたい旨、お伝えしました。

なお当日は、都内区市町村の議員の方も多くご参加いただいており、miracoと各自治体に問い合わせ調査を進めている「待機児童の調査基準・方法」について、出席した東京都連合所属の自治体議員で担当すると申し出て下さいました。

ぜひ、各自治体が実態に即した待機児童数を公開するよう、ボトムアップからの働きかけとなることを期待しています。