全国の都市部では、都市部への人口流入ブームもあいまって、保育園は作れども、待機児童は横ばいの状況が続いています。
そんな激戦の都市部でも東京都心にある「千代田区」では、過去10年のうち7度の「待機児童ゼロ」の記録を打ち立てています。区としても、区立保育園の拡充、私立認可の誘致、小規模保育やベビーシッターの利用補助など、保育の受け皿整備に努力されていると思います。
出典:千代田区ホームページ
待機児童ゼロという噂を聞いて、子育てと仕事の両立がしやすい街、そう思って引っ越して来る方も多いのも事実です。しかし、そこでちょっと気を付けたいのが、前回のブログで「ちよだマジック」と名付けた、待機児童カウント方法。待機児童はゼロといっても、例えば平成29年4月1日以降もこのような形で、保留児童数は推移しています。(注:保留児童数とは、認証保育所などの地方単独事業を利用している、認可保育園等に入所しているが転園を希望している、保護者が求職活動を休止している、育休を延長している、などの児童の数)
出典:千代田区ホームページ
従来より、待機児童のカウント方法は、各自治体に一定の裁量があり、その方法によって倍になったり、ゼロになったり、横並びで比較できない状況がありました。そこで様々な批判があり、平成29年3月に厚生労働省が「保育所等利用待機児童数調査要領」を改訂し、待機児童の定義が改められました。具体的には、「保護者が育児休業中の場合で復職の意思を確認できる」場合には、新たに待機児童に含めることになりました。
既に一部の自治体では新基準でカウントしていますが、それ以外の自治体も含め、平成30年度から全ての自治体で適用されることになっています。
千代田区の何が”マジック”なのかというと、「特定園留保」という、隠れ待機児童の扱い方です。
今回の改訂以前から、特定園留保の児童の扱いについて、「他に利用可能な特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業等があるに
も関わらず、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機している場合には待機児童数には含めないこと。」とあります。
この「他に利用可能な」とは、
(1) 開所時間が保護者の需要に応えている。(例えば、希望の保育所と開所時間に差異がないなど)
(2) 立地条件が登園するのに無理がない。(例えば、通常の交通手段により、自宅から20~30分未満で登園が可能など)
といった条件が示されています。
平成30年度からは、さらに(2)が改訂され、「立地条件が登園するのに無理がない。(例えば、通常の交通手段により、自宅から20~30分未満で登園が可能など、地域における地理的な要因や通常の交通手段の違い等を考慮した上で、通勤時間、通勤経路等を踏まえて判断する。)」と、より、毎日の通園の利便性を考慮した内容になっています。
しかし、千代田区では、認可保育園の申請書類で「区内のどこの認可園でもいいから通うという意思表示をしないと」待機児童にカウントされるパイに入りません。例えば、自宅から徒歩や自転車で15分以内の園を希望する、という考えは「使える園があるのに、個人的な理由で希望園を絞っている」という扱いになってしまう、ということです。他の自治体でもこのようなカウント方法は珍しいと思います。
(私が調べる限り他に知りませんが、もしご存知の方がいらっしゃったらお知らせいただければ幸いです。)
さらに、千代田区に問い合わせたところ、このカウントの仕方は平成30年度も変更の予定はないとのことです。保育園をお探しの方にとって、重要な指標となる「待機児童」という統計データが、横並びで比較できるものになっていなければ、間違った判断を助長してしまうことにもなりかねません。
※ちなみに、認証保育園にも入れない率(対申込者数)は、23区平均は6.6%で、千代田区5.7%で、平均より少しまし、ぐらいです。
ぜひ千代田区には、この点、見直しをしていただけないか、引き続き提案をして参りたいと思っています。