【2019年4月時点】待機児童では分からない”保育園に入りにくい自治体”ランキング

今年もついに、全国の市区町村別の待機児童の発表時期がやってまいりました。
本日9月6日(金)正午ごろ、2019年4月時点のデータが厚労省より発表されましたので、「隠れ待機児童」の視点も含めて分析を行いました。

今年4月時点の待機児童は16,772人で、去年の同じ時期より3,123人減少しました。
しかしながら、「隠れ待機児童」の一つで「特定の園を希望している」として待機児童数にカウントされていない人数は、昨年の41,002人から、今年は46,724人と、6,000人近く増えています。

「特定の園を希望」というのは、一般的には「近くに通える園があるのに、入園を希望しない(保護者の都合で入園を辞退している)」という意味の分類です。
ただ、その基準は、平成30年から待機児童の調査要領がさらに厳格に統一された後も、「1園しか書いていない場合のみ(待機児童から)除外」「自転車で20分走ったらいける範囲まで拒否したら除外」「区(市)全体の保育園を希望していないと除外」など、いまだ自治体ごとに格差があるのが実情です。

当分析では、各市区町村の人口規模や、このように現在でも統一がされていない待機児童のカウント基準の違いによる影響を極力除外するため、「入所保留率」(保育園の利用申し込みをした方のうち、認可施設と地方単独事業(認証保育所や市区町村の保育室など)を利用できなかった方の申込者数に対する割合)という独自の基準を用い、数値が高い(悪い)順にランキングしています。

こちらは、入所保留率上位(ワースト)30位のリストです。

なお、オレンジ色の箇所は「前年比で入所保留率が悪化している」、黄色の箇所は「入所保留者数が50人以上」を示しています。

上位の自治体を見てみると、北海道・埼玉・千葉・神奈川・大阪・福岡・鹿児島・沖縄など、これまでも待機児童が課題となっていた地域の自治体が引き続きランクインしています。

その下には、宮城・静岡・奈良・兵庫・山口など幅広い地域の自治体が散見されるようになり、これまで待機児童の課題で、着目されにくかった地方でも、都市部では入りにくい状態が発生していることがわかります。

量でいえば、人口の多い東京がもっとも待機児童数は多いですが、実質的な入りやすさを見るための比率でみると、東京23区の多くがランク外になっているのがわかります。一方これまでノーマークとされていたような、地方・郊外の市区町村でも、実は保育園に簡単に入れる状況ではなくなってきている、というのが見えてきます。

弊法人では、自治体の保育課担当者の方への直接ヒアリングや保育サービス整備の取り組みを継続的にウォッチしていますが、都心自治体では住民も行政も、この数年間、危機感をもって待機児童問題に向き合ってきた一方で、中心都市のベッドタウンと呼ばれる地域では、待機児童問題がここにきて突如(予想はできたと思われますが)顕在化し、行政の対応が後手に回っていると分析しています。

全国的には保育所の整備は進んでおり、待機児童の数は全体として減少するなど、一定の効果が出てきてはいますが、待機児童数には表れない「隠れ待機児童」は膨らみ続けており、きめ細かな地域ニーズに寄り添った対策が今後も求められます。

さらに、「特定の園を希望しているもの」の中には、育休延長のために「わざと1園しか書かない」保護者も一定数含まれるといわれています。
現状の統計では、このように本来の定義とは違う数字も混じりこんでおり、ニーズの正確な分析の障害になっていると思われます。
こうした制度設計上の矛盾に、国として分かりやすい形で整理し直してもらいたいと思いますし、また地方自治体にも、正確なニーズを把握するための知恵を絞っていただきたいと思います。